乱読派の読書メモ

本好きの本好きによる本好きのための読書記録

「義経じゃないほうの源平合戦」白蔵盈太

義経じゃないほうの源平合戦 (文芸社文庫 し 6-4)

 

珍しく本屋で長時間悩んだ末に購入した新本。

出先で微妙に時間ができたため、読み切れる感じのライトめなボリュームがいいなと手に取った。初めて読む作者さん。

 

タイトルから平家物語のコミカルなウラ話的なものだろうと思っていたが、だいたい予想通りのライトでポップな書き口。

そもそも平家物語を完読していないので(石を投げないでください!)断片的な知識しかないのだが、鎌倉の立役者おっかないお兄様頼朝と無邪気な天才弟義経にはさまれて凡人ぶりをいかんなく発揮する主人公範頼の息苦しさはなんだか身につまされた。

 

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とはいってもそこは源氏の血を引く者、言うほど無能じゃないし情けなくもない。

しっかりきっちり周りの人と関係を築き、やることはある程度ちゃんとやって、序盤こそ及び腰だが、そしてとてつもなく地味だが、けしてダメな将軍ではなかった、ように思える。

ただ兄貴と弟があまりにも非凡で派手でね…。そりゃ歴史に埋もれちゃうわ。

 

というところにスポットを当てた今作、目の付け所がめちゃくちゃ好み。

実際楽しく一気に読み切れた。たいへんよい娯楽だった。

書き口がところどころ現代風で、それがために移入しやすく読みやすい。

作者の意図にしっかり乗っかり、範頼についても結構調べた。

 

また機会があれば手に取ってみたい作家さんがひとり増えた。

そして何より、元祖平家物語をまずはちゃんと読まないとな!