以前夢中で読んだ「三体」の中で序盤に主人公が熱心に読んでいたのがこの本。
脳内あとで読むリストに入り、すぐ購入して読み始めたのがもう半年くらい前か。
すんげー時間かかった。
えっとね、なんというか、ものすごい難しかった。ほぼ学術書だ。
でも、読めてよかった。
面白かったかどうかと聞かれれば、非常に難解で苦痛だったけど面白かった、と答える。
時代が古すぎて今読むにはあらゆる意味合いでつらいが、それでも一冊を通して持っている雰囲気と、伝えたい情熱と、人類の深刻な問題とがあらゆる種類の情報で持って押し寄せてくる。
読み物、として面白いものではまったくないが、非常に貴重な情報満載で、地球や命について深く深く考えさせてくれる導本であることは間違いない。
ざっくり言うと、科学の進歩で手に入れた殺虫剤や農薬などが地球に自然に生き物に、ひいては人間に与える影響の深刻さをえんえんと書き連ねた本。
読み進めるとわかってくるが、やみくもに自然バンザイ、人間悔い改めよってわけではなく、できるだけ淡々と、人にとって害を及ぼすものたちへの対策はせねばならないとしながらも、それを上回る悪影響があることを実際の記録でもって知らしめ、それよりはましな方法はありはしないか、人は人として生きる以上ほかの生物の生き死にに影響を及ぼすことはいたしかないけれども、もっと危機感を持ってさまざまな方向性を模索せねばならないのではないか、と訴える。
この本が書かれたのは1962年。環境保護なんざどこ吹く風のまっさかりの時期に、著者はいち早く自然破壊への危機意識を示した。
いまどきの地球にやさしく思想のさきがけと言っていいだろう。
読み始めはヒステリックな自然至上主義者の主張かと思ったが、そんなテンションでもなく、ただひたすらに羅列される殺虫剤や農薬によるおびただしいまでの被害の記録は読み進める上の障害であった。
当時からすでに60年が経過しているわけで、わずか10年やそこらで新たな事実が続々と発見され、現在進行形で新しい技術がどんどん開発されている状態でもあり、どこまで信憑性を持って読んでいいかは疑問が残るが、とにかく羅列された事実そのものよりは、人によってもたらされるあらゆる禍福の可能性を深く考えさせられた作品だ。
なかでもっとも印象に残ったのは「ヒトは個人云々ではなく、種族としてそのDNAをつなぐことこそ至上命題である」みたいな一節。
当然と言えばそうなのだが、そう言い切れてしまうのはスゴイし、たしかに一面でその通りではある。
自然界やら地球やらというカテゴリで考えれば至極当然の思考ではあるが、研究者とはいえ、よりによって言葉で何かを綴っている個人がその言葉を発するというのが、なにやらわたしにはちょっとした衝撃であった。
最後には毒を持って毒を制すというひとつの解決法も提示されていて、それがまたどういう結果を引き起こすかはさておき、提言まできちんとなされていて、一冊の本としてなかなかに読み応えのある作品に仕上がっていた。
そして解説が秀逸だった。
この解説者について調べたら日本の農学者かなんかで、その人の本も取り寄せたので近いうちそちらの感想もあげることになるだろう。
ガチの教科書って感じなので読み終えるのがいつになるやらわからんが、楽しみではある。
こうして一冊読むごとにまたまるで知らなかった新たなジャンルで読みたいものが増えていく瞬間って、すごく幸せだ。