落語家志ん生の生涯を語ったエッセイ。
作者名は志ん生だが、実際は編者の小島貞二てえ人が志ん生に話を聞いてそれをまとめた感じなのかな。
落語は詳しいほど好きじゃないし、正直お耳もおつむもいいほうじゃあないから、わたしに志ん生はちょっとレベル高くて。
というのもわたしにとって落語は見るじゃなくて聞くなので、ほぼ音源でしか聞いたことがない。
そういうふうに音だけで聞くてえと、志ん生の落語はなんかもにょもにょしゃべってて、聞き取りにくいんでさ。
あたしゃア圓生みたく滑舌のいい演者が好きだねえ。
って書き口調も江戸弁に寄っちまってますが。
ちなみにこれ書いた時ちょうど読んでて、アヤシイ江戸弁になってらァ。
んでまあこの「びんぼう自慢」。
なめくじ長屋のエピソードなんかは有名だが、年若い頃のめちゃくちゃででたらめで破れかぶれなお話が満載。
そんななかでも案外と落語とは真面目に向き合っていたんだなという印象は受けた。
正直わたしのなかの志ん生のイメージって、酒ばっか飲んで高座にもベロベロで上がってる感じだったからさ。
いやまあ、酒好きはたいそうな酒好きで、多少盛ってあるにしたってたいがい酒好きなのはイメージ通りなんだけどね。
火事や地震で酒屋駆け込んで酒瓶抱いて逃げるどころか飲んじまうって、そんな人実在すんだ…。うちの旦那も白旗上げるわ。
よく耐えたかかァがほんとに立派だ。
男女平等だ多様化だとあれこれ変化してきてる現代だけど、昭和の女性は、それはそれはたくましかったんだなぁってホントに思うよ。
それがいいか悪いかとかべつにして、時代だったんだなあ。
これ読んでから志ん生の落語を聞くと、またちょっと違って聞こえるかもしれない。
通して読むと馴染んできて気づくとうつっちまう江戸弁の面白さ心地よさも含めて、当時の社会を知るにもよい一冊だった。
ただまあ、小説家の本分が小説であるのと同じく、落語家の本分は落語で、やっぱ高座での噺を聞くのがいちばん正しい志ん生の楽しみ方だろうとは思う。