◆透明な色彩の岩井ワールド
映像作家として有名な岩井俊二氏の著。
肩書にふさわしい透明な色彩の恋物語です。
正直変哲のない恋愛ものはあまり得意ではありません。
ですので、少し辛口の感想になります。
誉める意味合いではなく、失礼ながら少女向けの小説を読んだような感触。
好みの人は好みなのかもしれないが、個人的には映像でも見たいとも思えません。
◆甘酸っぱい青春時代をそのまま
映画では中山美穂さんが一人二役で主人公を演じています。見たことはありません、すみません。
小説では細かい心情が描かれています。
思春期独特の、どこか定まらないふわふわとした恋心。
ああもう、甘酸っぱい!
そういう青春時代の不安定だからこそ楽しい、みたいな感情を苦手でない人にとっては、おそらくどっぷりと浸かれる良質な本です。
それはもう、個人的に苦手ってだけの話ですので。
◆美しいことは美しい
苦手であっても、その美しさは評価できます。
恋愛ものが好き、だけでなく、誰しも心のどこかにひっそりと隠し持っている若かりし日の甘酸っぱさやほろ苦さ、みたいなものの扉を叩いてくれる感じはあります。
わたしのように苦手な人の心の扉にまで手が届く、という意味では、岩井氏はものすごくすぐれた書き手さんなのだ、とも言うことが出来そうです。
さらに年月が経ったら読み直してみたいです。
そのときはまた、印象が変わるかもしれません。