◆蝦夷たちの熱い魂
もう随分前に読了してまた最近に読み返したオススメ作品「火怨」、高橋克彦氏著、上下2冊。
サブタイトルは「北の耀星アテルイ」。
たしか吉川英治文学賞かなんか取ってますね。
全部ひっくるめて大絶賛ってわけにはいかない部分も多々あるのだけど、総合点としては高いです。
ものすごく熱くて勢いで読めます。
「炎立つ」「天を衝く」とあわせて「陸奥三部作」と呼ばれるそうな。
ちなみにこの2作は未読。
◆東北という土地に根付いた熱い男たちの物語
舞台は東北。
朝廷の王化に従わない蝦夷たちを討伐する都側と、人権を蹂躙され強引な王政に100年計画くらいで抵抗を続ける蝦夷たち側との攻防が壮大なスケールで描かれています。
野を駆け山を駆け馬を駆り酒を飲み交わしながら、男たちは時代という流れの中で儚い己の命を燃やし合い判り合いぶつかり合う。
関東生まれのわたしは土地に根付いた意識というモノをいまいち持ちにくいのですが、そういった感覚をとてもわからせてくれました。
この話のどこらへんまでがフィクションなのかはわかりかねますが、田村麻呂と東北討伐は記録として残っているらしいので、だいたいはそういうものだったと思っていいのでしょう。
この本では主役側が蝦夷なのでそちらの視点を主に書かれていますが、読みすすめるうちには朝廷側のさまざまな事情や苦慮も同じようにひしひしと伝わってきます。
立場の相違ゆえのいかんともしがたい齟齬、という点で非常によく描かれていたし考えさせられました。
◆パワーで引っ張って行ってくれる
ところどころ不満な表現(というか筆)もあるにはありました(みんな笑いすぎやねん!って読んだ人だけわかってくれればいい)が、それらも乗り越えてなお余りあるパワー。
涙なしには読めません。
けだし名作といってさしつかえないでしょう。
ラストも大満足の珠玉の一作、未読の方は是非。