1993年の作品、上下巻。直木賞、このミスも受賞、もちろん映画化ドラマ化済。
100万部越えのベストセラーというから既読の方も多かろう。
わたしが読んだのは確か2005~2010年くらいの間だったと思う。一読目の話。
おもしろかったな、くらいの印象しか残っておらず。
どんな話だった?と問われても「…山?」くらいしか返せない記憶だった。
しばらくどっぷり中国歴史だったのでちょっと離れてみようと思い、「亡国のイージス」を手に取ったのが一週間前くらい。ふと本棚を眺めているとこの「マークスの山」が目に入り、なんかタイトルの印象が似てるな、どんな話だっけコレ、とそっちを先に読み始めることになった。
ちなみに「亡国~」はまだ未読。このあと2,3番目くらいには読む予定。
(その後読みました)
なぜ次じゃないかというと、次はもう決まってしまって読み始めているから。
「山の話」として印象にあったのだが、わたしの覚えていた「山の話」はこれじゃなくてどうやら「ホワイトアウト」だったようで。
雪山の凄まじさを描いた作品だと思って読みだしたら全然(全然と言っていいくらい)違った。
(ホワイトアウトも読みたくなって次に読んだ)
前置き長くなったが本作。
ミステリでサスペンスで社会派、本格小説といろいろな肩書があてはまる。
なるほど流行るだけある、盛り沢山で飽きさせず上下2巻のボリュームも気にならないくらいには牽引してくれる。
登場人物たちの魅力が非常に高い。今作の主人公はのちにシリーズ化されたようでそれも納得。
描かれる事柄もたいへんに興味深く、よく調べてるんだろうなとも思わせる。
が、二読目(といっても一読目の記憶はないに等しいのだが)の印象としては「詰め込みすぎ」「体制に対する偏見とか批判とかが露骨すぎ」「最後説明不足すぎ」で、すごく楽しく読み進めたぶん、ラストはなんかちょっと納得いかない気持ちだった。
しかもそれは作者のせいではまるっきりないんだけど、最後の最後超盛り上がってくる大事な部分で主要キャラの名前が間違っていて、誤字脱字に敏感なわたしはちょっと足をひっかけられたような気持ちになった。ほかにも何か所か誤字脱字があって都度気になってしまった。古い本なので仕方ない、改訂版とかでは直ってるのかもしれん。
社会や組織への批判的な立ち位置等でところどころ水を差される感じになるいっぽうで、精神薄弱の描写などは読んでる方が不可解でイライラしながらもいつのまにか少しワカル、みたいな気持ちになり、そんな自分にビックリしたりするほど精緻で、それぞれの人々が放つ等身大以上でも以下でもない人間らしさはよかった。
作家、あるいは作品にはそれを象徴するかのごとく何度も使われる表現や単語があって、この作品では「隠微」という言葉がそれだった。
社会や組織の中の隠微さ、人間関係や個人の中の隠微さ、つまりそういったものを描いた作品だと言えるかもしれない。
面白かったか否かと問われれば面白かったと答えるが、ツッコミどころは少なくなく、ストーリー展開としては力業に近いし消化不良なので、人に勧めるかんじではないかな。