以前テレビで藤子F不二雄についてやっていたのを見た。
そのとき家人がこんなことを言った。
「(あえて分類するなら)手塚は画家、藤子Fは小説家」
わかる話だ。
手塚ももちろんストーリーテラーとしては化け物じみているが、彼の場合は絵へのこだわりが凄い。
藤子Fはどうしても絵が一段落ち、だが、そのショートショートとでも呼べるSF作品の数々は目を見張るものがある。
星新一に共通するモノを感じる(←大好き)。
藤子Fといえば当然その代名詞ともいえるものはドラえもんだが、わたしは個人的に彼の作品にはそれほど興味がなかった、「カンビュセスの籤」を読むまでは。
件の番組でもやっていたが、ドラを描きはじめる前に苦しんでいた頃、オトナ向けの雑誌にSF短編を描いたそうな。
それが「ミノタウロスの皿」で、「カンビュセス~」に収録されているのを読んだ時のことをいまでも覚えている。
「ミノタウロス~」は人間が家畜として飼われて、おいしく食べられることを喜びに感じる様子を描いた作品。
絵が絵だけに、乾いた凄惨さを伴っていた。
表題作「カンビュセス~」のほかも、そういった視点で描かれたむき出しの空想の怖さとおもしろさがぎゅうぎゅうに詰められた一冊だった。
わたしの藤子Fの評価は一変した。いまでもときどき読み返す。