実在した江戸時代前期の囲碁棋士・天文暦学者の安井算哲(渋川春海)の生涯を描いた小説。
本屋大賞を取っていたのを思い出して手に取った。映画化もされて流行ったのかな?
読んだのはたぶん数年前。
暦のことを調べるにあたり、思い出して書いておこうと思い立った。
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上下巻だが長いと感じなかった。
わりと今風の筆で、時代臭さもなく、よく言えばスムーズに、悪く言えば平坦に、でも筆の質がいいので躓くことなく読み切れた。
現代に生きていると暦にそれほど疑問を持つこともないが、微妙にずれていく暦を唯一の羅針盤としていた時代においては、それはとてもストレスで、同時に研究対象として命を燃やすほどの存在であったのだろう。
小説として心に残ったってほどではなかったけれど、扱われたテーマが非常に面白かったので印象に残っている感じ。
作品としてのジャンルはまるで違うが、漫画「チ。」を読んだ時の印象と近い。
理によって答えを求める数学的思考、天体や星の観測、そしてそれに生涯を賭けるという共通点からだろう。
歴史ものらしさは少ないので歴史小説という分類は微妙だが、小説としてはいい出来だと思う。
本好きなら一度は読んで損はない。