キングダムを読んでいて、あまりに面白かったので史記に興味を持った。
そういえば史記ってぜんっぜん話知らないな。
三国志は大好きで水滸伝も読んだが、それ以外の中国歴史系ってのはまるで知識がない。
ちょっと調べると「史記」というのは司馬遷が書いた歴史書で、伝説時代から司馬遷自身が生きた時代に至るまでの記録内容の期間は約二千数百年にものぼるそうだ。
二千年って、西暦より長いじゃん。なにそれ。
いろんな形式のものがあるのだが、おおまかな流れを書いたと思われる本紀だけで12巻。時代ごとに巻が分かれており、殷だの周だのの記録がある様子。
「キングダム」で描かれていたのは秦および始皇帝時代なので巻で言うと5~6巻。
司馬遼太郎作品で有名な「項羽と劉邦」は7~8巻あたりか、まだ未読だが。
余談だが彼のペンネームは司馬遷から取ったというのは有名な話だね。司馬遷に遠く及ばぬといった意味合いだそうな。
そして本作北方版史記はサブタイトルでうたっている通り、武帝の時代。
作者司馬遷自身も登場する最終12巻にあたる時代を描いたお話。
北方作品だからこれにした、わけではまったくない。
読むにあたり、史記そのものが前述のように膨大な期間を対象にしているとあって、ちょうどいいものが見当たらなかった。
歴史書をそのまま読んでも面白がれる気は全くしないし、予備知識もないので、ある程度とっつきやすく面白く勢いで読ませてもらえたらいいな、くらいの気持ちで本作を選んだ。
著者についてはずっと「北方三国志」を読まなきゃな、と思っていたくらいの認知度で、彼の著作はまだ読んだことがなかった。
歴史ものをたくさん書いてる、ハードボイルド出身の、ベロベロ寄りの作家。
失礼ながらそういうイメージだった。
そういうわけで読みだしたのだが。
これがなんて面白い!面白い!
全7巻、いっきに駆け抜けました。
歴史ものは鉄板で面白いのは当たり前っちゃあ当たり前なんだけど、まー読みやすい。
するする体に入ってくる。
なじみのなさすぎる登場人物たちの名前にはいささかてこずったが、それを補ってあまりある圧倒的描写力。
そして、ハードボイルドと歴史ものって相性最高なんだね。
つか考えたら当たり前か、歴史ものがハードボイルドじゃないわけないもんな。
ジャンル分けの話をすると頭がこんがらがっちゃうのでまあいいや。
とにかく著者の筆の質と舞台がぴったり合わさって、時に怒り、時に涙し、広大な中国の大地を一緒に駆け抜けたような実に爽快で壮大な読書体験だった。
ラストは個人的にはちょっと物足りない気持ちだったが、武帝の時代をともに生き切ったような不思議な充実感を与えてくれた。
さらに細かく書きたいことは山ほどあるが、まだ一読なのでひとまずは新鮮な興奮だけお届けするとしよう。
最&高でした。絶賛オススメ。
そして現在は、当然のように北方三国志に流れています。
まだしばらく歴史ものに埋没した幸福な日々が続く模様です。