これはねー。なんつーか、「やられた!」って思った本。
「桐島、部活やめるってよ」で一躍有名になった人、って程度の認識だったから、正直これを手に取った時も結構逡巡したんだよ。
就活の話らしいし、さわやかな青春ものってのもどうもなあ。
とはいえ食わず嫌いはアカン。とりあえず世間で流行ったものにはチャレンジしてみねば。
いやいやなかなかどうして、青春ものと言やあそうなんだけど。
殺人があるわけでもなし、どでかい盛り上がりのシーンがあるわけでもないんだけど。
見事なまでにサスペンス仕立て。とまんなかった。
筆も達者で読みやすいが、特筆すべきは人物描写力。
よく「リアリティのある」なんて表現を使うけど、この人の描く「ヒト」はリアリティなんて言葉じゃなまぬるい。
もうね、いるよ。絶対どっかに存在してるだろ。
架空の人物に架空の設定のはずなのにここまで生々しい描写ができるのは天晴。
そう、「生々しい」んだよ。あまりにも。
ネット世代の感覚を巧みに取り入れ、それでいて今時の若者はってのを微塵も感じさせない。
いやむしろ今時の若者だからこそ書けるんだなこんなの。悔しいけど素晴らしい。
この「悔しい」ってのは、なんつーかうまく言えないんだけど。
舞台で一本、設定で一本、みたいな小説と違って、舞台も、話の展開も、正直どこにでもありすぎるありふれたモノ。
それなのにこんなに面白い!ことがなんかこう悔しいんだよね。してやられた感じ。
人の心をぐぐっとえぐる描写も多く、印象的な名作でした。
この著者の作品は今後正直、すっごい読みたくないけどすっごい読みたい。
この矛盾した感情がまんま「何者」を読んだ感想です。
まーったく、最近の若者は!
…すげえよ!